上州の赤久縄山に登った時のことです。山頂までもうすぐという時にスズメバチが寄ってきました。まわりをブンブン飛んで、進むごとにだんだん数が増えてきます。
よく見ると引き上げていくハチが援軍を呼んで帰ってくるようで、5-6匹のハチになって戻って来ます。なるべく刺激しないよう恐る恐る進んで何とか山頂に着くことができました。
山頂は広場になっていましたが、反対側あたりに巣があるようです。スズメバチに囲まれていては景色を楽しむどころでもないので、早々に下山することにしました。
いったい何をしに来たのだろうと思いながら帰路につきましたが、かなり下りるまで監視役につきまとわれていました。でも、この時は周りをブンブン飛ぶだけで、まだ良い方だったことが後で解りました。
今度は、多摩の石尾根を登って六ツ石山に行こうとしていた時でした。スズメバチが寄ってきて、こちらを向いてホバリングしています。構わず進むと、やはりだんだん数が多くなってきました。
この時せいぜい10匹弱ぐらいだったと記憶していますが、赤久縄山の時より怒っているのがわかります。私が進もうとしている前に立ちはだかっている(もちろん立っているわけではありませんが)ようであることに気が付きました。「このまま進むのなら攻撃するぞ」と威嚇されている感じがしました。
この時は運の良いことに広い尾根道でしたので、来るなと言われている登山道の方角を避けて、左側の林の中を迂回して進むことにしました。案の定、左側に外れるとハチは追ってきません。100mほど先で元の道に戻りましたが、警戒ラインは外れたようでそれ以後は特に問題はありませんでした。
最後は青梅御岳から七代の滝を経て養沢川沿いに下りていた時のことです。林道の道端で座って休んだあと、そろそろ歩き出すかと立ち上がったちょうどその時に一匹のスズメバチが通りかかったようです。
たぶん私が突然立ち上がったのを攻撃されると勘違いしたのでしょう、めちゃめちゃ怒っています。ホバリングをちょうどこちらの目の高さに合わせてきます。ちょうど睨み合っているかたちですが、あちらは複眼ですので睨み合いは圧倒的に負けています。それに、いったいどこからこんな大きな音がでるのか、カチッ、カチッと音を出しています。
そうした状態で10秒ほど時間がたちましたが、とても長い時間に感じられました。何とかやり過ごしたいのですが、進みたい方向にハチがいます。本能的に目は外さずに一旦少し後ずさりをしました。
そしたらとたんに敵は横をすり抜けて行ってしまいました。ひょっとすると、あちらもびっくりしただけで戦う気は無かったのかもしれません。ハチのような昆虫にも感情のようなものはあるのだなあと感じて、逆に少しだけ親しみが持てるようになりました。
それぞれとても怖かった思い出ですが、冷静に見ていればハチが何を言いたいのかだんだん解ってくるような気がしました。
2000年を過ぎたあたりから近場の丘陵から低山にスズメバチが増えているように感じます。今回のような遭遇が丸1日かけて山登りした後の下山路の最後にあって、山筋か谷筋が狭くて遠回りできない状況だったとしたら、そのまま突破するか戻って登り直すかをかなり悩むかもしれません。