鷹の渡り観察の入門知識

鷹柱  鷹の一部はいわゆる夏鳥で、秋になると避寒のため東南アジアに移動します。これを「鷹の渡り」と呼んでいて日本各地で観察できます。
 鷹はとても高い所を翔ぶので、肉眼では見えてもゴマ粒ぐらい。双眼鏡前提の観察となります。
 右の写真は30羽程度の鷹柱(上昇気流がある所に集まった多くの鷹が輪を描き高度を上げること)を光学10倍ズームのデジカメで撮ったもの。丸印に7羽映ってますが小さくて見えない鷹が多く、一般的に見たり撮ったりする限界が分かる写真だと思います。

鷹は長旅で疲れないのか?

(答え)帆翔(ソアリング)をします
 鷹たちは長い距離を移動しなければならないので、クルリと輪を描いて高度を稼いでは滑空するといった省エネな飛び方をします。ほとんど羽ばたかずにツーーと翔んでいきます。専門用語では帆翔(はんしょう、ソアリング)と言います。
 旋回する時には尾羽を開いたり、向かい風では翼を縮めたりしますが、気流に乗って翼も尾も伸ばしている姿は颯爽として実にかっこいいです。

渡航のルートはどこ経由か?

(答え)ハチクマは朝鮮や中国大陸まで一気に渡りますが、サシバは南西諸島沿いに台湾経由で渡るようです。
 慶應大学の研究で青森に住んでいるハチクマにGPSをつけたら、日本海側を南下してから朝鮮や上海に渡って、東南アジアからインドネシアあたりまで渡ったようです(リンク:慶應義塾大学ハチクマ渡り公開プロジェクト)。地球規模で生活していてびっくりするほどダイナミックですね。
 ハチクマががっしりしているのに対してサシバは比較的スマートな鷹です。サシバは体力不足なのでしょうか、南西諸島沿いに台湾経由で渡るのが通常のようです。

日本内はどこを通りますか?

(答え)関東から富士山の左側ルート、右側ルートがあります
 東京で観察できる鷹は北関東方面からやってきます。彼らは富士山を目指して関東平野を横断して、西の山岳地帯に入っていくわけです。青梅から甲府に出る富士山の右側ルート、相模川から丹沢を越す富士山の左側ルートがあるようです。
 富士山を超えてからは概ね太平洋の海岸線沿いに移動していきます。伊勢湾を越す前の伊良湖岬では大きな鷹柱が立つようです。

いつどこを渡っているのか?

(答え)「タカの渡り全国ネットワーク」を参照して下さい
タカの渡り全国ネットワーク  鷹がいつどこをどのぐらい渡るのかについては左の図をタップして「タカの渡り全国ネットワーク」を見て下さい。このページには、タカの渡りを観察している全国の野鳥の会からの計測記録が掲載されています。
 東京近辺の観察場所には、飯能市天覧山頂、青梅市梅の公園、羽村市郷土博物館前、八王子市下恩方町、相模原市城山湖があります。
 これらの観察場所はいずれも関東平野から西の山岳地帯に入る入口点ですので、結果として概ね圏央道(首都圏中央連絡自動車道)の近くに並んでいます。山を越えるルートを悩んだ鷹は圏央道沿いに移動していることもあるようです。

渡りのピークを予測できないか?

(答え)残念ながら明確な予想はできません
 さて、いざ渡りを見たいと思っても毎日出掛けるわけにはなかなかいきません。そこで今日はたくさん渡りそうだとか予測をしたいところですが、残念ながら天候や温度や風向きとの明確な関連性は無いようです。ただ私の経験上では「9月末に最高気温が20度近くまで下がった翌日にスカっと晴れた日(多くは雨上がり)」によく渡るようです。なお東京近辺での観察時間はだいたいお昼前後がピークとなります。

双眼鏡はどういうのが良いか?

(答え)入門用には倍率8倍の1万円以下の機種で十分です
 倍率は高い方が大きく見えて良いと思いがちですがそうでもありません。構造的に倍率が高いほど視野が狭くなり手振れもしますので扱いが大変難しくなります。一般的にバードウォッチングに適しているのは8倍と言われます。
 大規模なカメラ屋には自由に覗き比べられるコーナーがありますので、是非とも覗き比べてみてください。視界や明るさ、使い勝手がメーカーと機種によって随分違うものだと理解できます。

観察のコツはありますか?

(答え)見上げるぐらいの高い角度に注目です
 飛来してくるところをなるべく早くから見つけたいところですが、実際は真上に来てから気付くことが多いです。これは低い角度にいる時は遠すぎて見えなかったのが、見上げるぐらいまで近付けば見えてくるというわけです。一度見つければ遠ざかっていく時はある程度追っていくことができます。
 ずっと双眼鏡で上を見張っているのはかなり疲れますので、折りたたみの椅子を持って行ってお菓子でも食べながら10時から2時ぐらいまでノンビリと観察するのがお勧めです。また昨今は10月に入っても暑いので、日除けや紫外線対策も重要です。




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